続 旅館が変わる赤字が消える その3
セット化で魅力アップへ
Press release
  2002.05.25/観光経済新聞

 売上アップの自己診断−企画商品バランス
宿泊・宴会売上のアップへ向けた戦略の第3回は企画商品政策。

【基本スタンス】 
ここでのテーマは、年間を通した「企画商品」のあり方をどう捉えて実施するかにある。具体的には、旅館・ホテルの商品である料理や施設を組み合わせ、販売面で効果を発揮するセット商品として企画することであり、当然ながらそこにはニーズにマッチした商品力と魅力的で売り易い価格設定がポイントとなる。

【政策内容】 
価格政策で中心となるのは、以下の5項目である。

@セット販売
 施設・料理・サービスのグレードに応じた価格設定は、これまでも一般的に行われていた。しかし、そうした価格設定は、多くの場合に旅館側の便宜的な料金区分としての意味合いが強かった。例えば「特別室プラン」「お手軽プラン」といった価格設定は、客の側からみると具体的な内容がみえてこない。どこまでも価格が高いか安いかであり、商品としての訴求力は乏しい。そこで、環境やシーズンごとの特性を掘り起こし、それらをトータルにセット化することで、単なる価格グレードではなく、魅力的な商品として売り出す企画力が求められる。四季折々に展開する窓外の景観を商品の一部として積極的にアピールするなど、方法は多様である。大切なことは、外部からの示唆ではなく、もっとも身近にいる経営者・従業員が自ら自館の魅力を発掘する姿勢の有無にある。

Aイベント企画
 都市ホテルで行われているディナーショーなどのイベントをセットにした商品企画である。ただし、一般にショー経費が高額なため、販売価格は割高にならざるを得ない。割高であっても確実に集客可能なショー、あるいは無名でも満足させられるショーなど、取り組み方はさまざまだが、いずれもオリジナルイベントとしてのPR効果は大きい。ただし、ターゲットの絞込みなど企画段階での緻密さは欠かせない。

B歳時企画
 自然環境に恵まれた立地にある旅館・ホテルは、それ自体が四季の移ろいを色濃く感じさせて客を魅了する。ただ、そうした天恵だけでなく、人間の営みに密着した歳時を織り込むことで一層の厚みを増すことは確かだ。歳時企画といえば、忘新年会、クリスマスパーティーなどに代表されが、年間を通じて大小さまざまな歳時イベントが繰り広げられており、それらを企画商品として設定することが考えられる。例えば、母の日に比べて陰の薄い父の日にスポットをあてた「父の日パーティー」(前後2週間限定商品)や、新緑からのグリーンシーズン期間中のビアパーティーなど、歳時記をひも解けば企画のネタは無尽蔵。自館の実情に即した企画で訴求が可能である。

C特別料理企画
 いわゆる特別料理としてこれまでも実施されてきた点である。高価な素材だけでなく、客の求めに徹底して応じるなど、視点を換えると特別料理の幅はさらに広がるはずだ。

D商品付企画
 電化製品やお土産など、持ち帰りのできる商品をセットした企画。客層によっては訴求力があり、一考を要するテーマでもある。

以上の企画商品政策は、場当たりではなく年間を通した政策として位置付けることで、オン期のプラスアルファ、オフ期の底上げなどが可能となる。(企画設計・松本正憲)

(つづく)