続 旅館が変わる赤字が消える その1
価格政策は「年間」で発想 |
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売上アップの自己診断−価格バランス
【概略】
宿泊・宴会売上のアップへ向けた戦略では、@価格政策A人員政策B商品政策の3点から検討する。今回は1項目目の価格政策。ここでいう価格政策は、宿泊料金としての室料および宿泊に付帯する食事料金を含むもので、形態的には「1泊2食」「1泊1食」「素泊まり」などについて、実情に即したすべてを包括するものと捉える。
【基本スタンス】
これら価格政策の基本的は、年間を通した「平均販売価格」を設定し、これをベースにシーズン波動やイベントなど特別な諸因子を考慮する。狙いは、年間の販売目標を現実により近いものとすることで、経営資源の合理的な展開を図ることにある。
【政策内容】
価格政策で中心となるのは、以下の5項目である。
@客室タイプ別価格設定
この価格設定については、すでに「スペースの大小」「景観の良し悪し」「調度を含むグレード」など、各館各様の物差しで実施されている。煩雑な区分は混乱を招く一因にもなるが、経年変化など実態に即した形で検討する余地は多分に残されている。泊食分離などのニーズに対応した価格設定では、考慮すべきポイントとなる。
A料理別価格設定
客室タイプ別価格と同様に、従前から施行されてきたものの一つである。今日的な課題は、料理先行か価格先行かにある。これは、単に原価率からメニューを逆算するやり方ではなく、利用者のニーズと原価率を整合させる新たなメニュー構成・提供の方法など多くの課題を含んでいる。そうした点への取組み度合いが、自己診断では欠かせない。
Bシーズン毎価格政策
年間を「満館日」と「オンシーズン」「オフシーズン」などに分類し、それに応じた価格を設定する。従来の「休前日」「特定日」「オフシーズン」といった区分で膠着化させるのではなく、「オンシーズン」のなかの「オフデー」(平日特割)といったキメ細かで柔軟な設定が必要。成り行きまかせの泥縄的な安売りではなく、年間計画をベースにした洗い直し、組換えが欠かせない。そのときに、対前年実績・予約現状・進行中の営業など諸因子をもとにしたシミュレーションを、どこまで実施し現状に刷り合わせる作業を日々行っているかが要チェック。
Cイベント価格設定
地域の恒常的なイベントのほかに、その年だけ実施される限定的なイベントへの対応も、価格政策には欠かせない。とくにイベント前・後の価格との相関性も無視できないことから、従前の多く見込まれる(需要過多)から「オンシーズン価格」といった発想では、今後の地域間競争でマイナス要因になる。イベント情報を的確に収集すると同時に、年間の平均価格と整合させる視点での取組み姿勢がカギとなる。
D特別施策価格
前述の「平日特割」だけでなく、間近の予約状況に照らして柔軟に対応できる価格政策を策定しておく。同時に販売チャンネル・告知宣伝の手法なども確立しておく必要があり、同時にその施策を発動する条件設定なども明確しておかないと、通常の販促活動と錯綜してしまう。
(企画設計・松本正憲)
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(つづく) |
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