「旅館経営マニュアル」 その34
マニュアルづくりのポイント |
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ISO認証取得を前提にマニュアルづくりのポイントを整理してみよう。品質マニュアルは、システムを推進する上で最高位に位置する文書である。下位文書として手順書、フロー図、工程表などがある。
これまで述べてきたように品質マニュアルは、「経営者の経営理念」を具体化したものでなければならない。ということは、下位文書は各担当レベル作成できるが、ここについては経営者・責任者が中心になって書き進めることになる。いわば、表記上ではなく、心構えとして重視されなければならないポイントである。
さて、具体的なポイントとしては、「必要最小限」に絞り込むことが上げられる。前述のように文書化においては、上位文書と下位文書が層を成しているわけで、これらは互いに整合性が必要である。その際に、各層の文書が「書き込み過ぎ」の状態になっていると、まさに煩雑で実行できないものになってしまう。ときには書き込み過ぎた余計な言葉が整合性を損ない、結果として矛盾や混乱を引き起こす懸念もある。
したがって、ISOで規定されている「要求事項」を自館の実情に照らして咀嚼し、必要限のことがらを記載することである。
例えば手順書などは、経営者が定めた品質を、「いかに維持するか」を念頭に置き、さしたる影響のないコト細かなことまで書き過ぎないようにするのが肝心である。
このことを記述表現として捉えるならば、「誰が読んで利用するのか」といった対象の絞込みにも通じるといえる。その際に「誰が読んでも分かり易く」と思いがちであるが、多少乱暴ないい方をすれば、未経験者を対象にしないぐらいのスタンスが必要である。
なぜならば、未経験者・初心者が作業にあたるときの状況を想定してみればいい。実際の場面では、必ず担当部者の責任者などの指示にしたがって作業をしているわけである。手順書などのマニュアルだけを手渡して「これに従ってやりなさい」と突き放すケースはないはずである。
さらにいうならば、OJTをはじめ、そのための教育システムが別途確立されているはずである。細部について教えるのは、そうした機会に委ねれば十分だといえよう。言葉を換えれば、指示を下せる社員の養成も念頭にて、マニュアルを捉える必要がある。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
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(つづく) |
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