「旅館経営マニュアル」 その33
「分ってるつもり」は不適合
Press release
  2001.12.08/観光経済新聞

 前号では審査でのチェックを中心に述べたが、その結果がどう判断されるかを記してみたい。つまり、適合しているか否か判断されるときのポイントである。もちろん、不適合であれば認証はされない。
 この「不適合」は、致命的なものと軽微なものに大別できる。軽微なものであれば、多少の目こぼしもあり得るが、システム維持に致命的な影響を与える重大な不適合が発見されれば、振り出しに戻ってしまう。
 致命的なものとしては、品質マニュアルそのものの不備があげられる。マニュアルづくりでの具体的なポイントは次号以降に述べるが、要はISOの要求事項が充たされていなければ、当然ながら不適合となる。
 また、マニュアルが適合していても、実際の作業がそれと乖離していれば、何のためのマニュアルか分からない。これも致命的な欠陥・不適合である。
 このほか、しばしば登場する文書化での不適合もある。作業に対する手順書の不備をはじめ、一般的な作業で記録の不備も、ここでは不適合の対象となる。
 一方、軽微なものとしては、文書化をはじめ、いわゆる主旨の徹底などにからむ事項があげられる。ただし、軽微であってもそれが何重にも積み上げられれば、やはり本質的に不適合と判断されてしまう。
 例えば、文書化では、同じ事柄について幾つもの言葉で表現したりするケースがある。これは、混乱を招く元であり避けなければならない。用語の統一は、作業手順などを明確にする上でも欠かせないといえる。
 また、作成された文書には、責任者がサインをしておくことも忘れてはならない。とくに記録書類などでは大切である。これは責任の所在・分担などの曖昧さにもつながるものであり、つい忘れがちだが要注意事項でもある。
 このほか、品質方針をはじめ定められた主旨が徹底されていないことも、不適合の一つにあげられる。主旨徹底を妨げる要因には、日常の作業の中で生まれた慣れなどもあげられるが、要は、「分かっているつもり」だけでは不十分である。
 さらに、盲点になりがちなのものとして、更新した文書と古い文書の混在がある。間違いの原因になりがちな古い文書を、新しい文書と同じファイルで保存しないということである。ささいなことではあるが、こうした注意が必要である。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
(つづく)