「旅館経営マニュアル」 その30
「内部監査」の要請と役割
Press release
  2001.11.17/観光経済新聞

 マニュアルの整備がスタートし、一定の軌道に乗った段階で「内部監査員」の養成に着手することが欠かせない。
 内部監査は、業務が規定のプロセスに従って運用されているか否かを判断するもので、その監査員は一般には課長職以上の社員が、一定の研修を経て任にあたっているようである。
 ここで留意する点は、監査をする上での知識や技術だけでなく、客観性を発揮するための「独立性」が保たれなければならない点である。具体的には、その部署の責任者が監査にあたるのではなく、他の部署の社員であることが求められる。いわば相互監査の仕組みともいえる。 こうした監査員の育成は、外部機関による研修が一般的である。
 第三段階は、整備されつつあるマニュアルを、実際の作業に落とし込み、さらに整合を図っていく段階といえよう。いわゆるシステム運用である。たとえば、フォーマット化された文書が、実際にどのように機能するかをウォッチする必要がある。
 もちろん、この間に並行して実際の作業にあたる各部の担当社員を、それぞれ教育する作業も佳境にはいっていなければならない。教育では、全社的なISOへのコンセンサスと部署ごとの専門分野の両面で行われることになる。したがって、旅館・ホテルの多忙な業務をかいくぐって実施することから、事前に適切なプログラムを組んでおくことも大切である。
 第四段階は、前述の監査員の育成ともかかわるが、運用中のシステムが確実に機能していることを監査することである。これは、認証取得へ向けた準備段階として大きなポジションを占めている。
 多少オーバーな言い回しではあるが、この内部監査によって、不適合な部分が必ず発見されるはずである。ここで発見されなくても、実際の審査で発見されれば振り出しにもどってしまう。厳密な上にも厳密であることが望ましい。
 こうして内部監査を経た後は、不適合部分を是正することになる。マニュアルの見直しであり、ここまでくれば第五段階となる。この最終ともいえる段階での留意点は、経営者が各部門での実況を把握し、内部監査のデータなどに照らして、自ら最善の方向を決定することである。いわば、経営方針の明確化である。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
(つづく)