「旅館経営マニュアル」 その29
「なぜ、取得するのか」明確に
Press release
  2001.11.10/観光経済新聞

 ISOの認証取得へ向けた具体的な作業を、今号から整理してみよう。 一般には経営トップが意思決定をして、社内へ表明する。この「キックオフ」から認証取得の第一段階がスタートする。こうした「取得宣言」と相前後して、コンサルタントや審査機関の検討をすることになる。
 さらに、従来の品質管理の状況などを整理し、問題点の洗い出しなどをしておくと次の作業にスムースに移行できる。これは、ISOに基づく経営システムの再構築で、業務プロセスの見直しが不可欠だからである。例えば、「貴館の文書システムは云々」といわれて、「えーと、予約関係はこうだったが、厨房はどうだっけ」「そうそう、あそこでもチェック票があった」など、返答に窮したり未整理でさみだれ式だったりすれば、初期段階で作業が長引くばかりである。
 こうした経営システムの再構築は、まさに手順が肝心である。そうした意味からも、最初の段階で経営トップが、「なぜ取得するのか」を明確に意識し、心づもりを固めておくことが欠かせない。
 取得を宣言するキックオフにあわせて、社内での推進体制を整備する必要がある。もっとも、ISOの認証取得のへ向けた専門部署などは、旅館・ホテルではよほど特殊なケースを除いて必要はないだろう。各部署から選抜した委員会によって対応が可能である。具体的には、委員会をとりまとめる事務局員と実施責任を担う管理責任者、推進委員といった構成となる。
 第一段階では、キックオフに続いて業務プロセスの調査がスタートする。業務内容やプロセス、部署間の連携など多角的に調査するために、数カ月を要するケースが少なくない。また、こうした作業と並行して、ISOの規格を理解するための作業が進められる。取得後の実効を引き出すためには不可欠な過程である。
 第二段階は、規定手順書の整備をはじめ文書体系の整備がスタートする。キックオフから五〜六週間目が一応の目安となるが、ケース・バイ・ケースである。また、この作業が一定のレベルに達した段階でマニュアルの整備が始まる。
 これらの第二段階の諸作業には、およそ半年はみておく必要がある。マニュアルづくりのポイントなどは次回以降に紹介するが、ここまでは地道な作業の連続ともいえる。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
(つづく)