「旅館経営マニュアル」 その28
安価で認証取得する情報を
Press release
  2001.11.03/観光経済新聞

 前号では、ISOの認証取得へ向けた「実効を引き出す課題」として、品質システムの考え方を中心に述べたが、今号では経費と運用での問題を検討したい。
 まず、経費面では「費用対効果で高い買い物」にさせないのは前述のとおりである。一般的には、認証取得へ向けたコンサルタント費用が高額であることに集約しがちである。確かに、指導員の派遣を受けながらシステム整備を進める以上、この経費は高額なものになる。一回(一日)の派遣料は十数万円で、取得までに数十回を数えれば、それだけでも数百万円がかかる計算になってしまう。
 ただし、この点については、もっと安価で済む方法が模索されており、そうした情報を入手することが第一歩かもしれない。
 このため経費面で留意すべきは、前号とも関連するが、自館の実情に沿ったシステム構築を目指し、大企業を模したような複雑なシステムを避ける必要がある。複雑になれば、当然のこととして期間が長期化し、コストもかさんでくる。
 また、内部監査員の養成にも相応の経費がかかる。さらに視点を換えると、取得へ向けたプロジェクトチームを編成し、これにも少なからぬ時間がとられる。言葉を換えれば経費を支出しているわけであり、これも長引けば負担になる。
 運用面では、これまでも指摘したように、認証取得だけを念頭においたシステムでは、ISO本来の機能を引き出すことが難しい。経営者の取り組み姿勢が問われるところである。
 また、前項とも関わる問題として、日常業務との整合が大きな要素である。システム内容を複雑にし過ぎると、無用な混乱を引き起こすことになる。ISOを導入することで従来の業務に支障をきたすようでは、意味がない。
 さらに、複雑化による問題は、定期審査における負担を増大させることにもなる懸念がある。ISOの認証を取得した場合、それで終わりではない。毎年の定期審査と、三年ごとの定期審査があることを忘れてはならない。この定期審査で必要以上のコストをかけているケースも、決して少なくはない。
 したがって、前号のシステム構築をはじめ、以上に示したコストと運用面については、取り組み段階から綿密に取り組んでおくことが肝要だといえる。これは経営者の責務でもある。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
(つづく)