「旅館経営マニュアル」 その26
認証取得を実効性ある投資に
Press release
  2001.10.20/観光経済新聞

 ISOの認証を個々の中小企業が取得しようとした場合、一般的にみて数百万円の費用がかかるといわれている。もちろん、これはコンサルタントを導入した場合であって、実際の費用はケース・バイ・ケースとしか表現のしようがないようだ。ただ、過去の調査データによると、八割以上がコンサルタントの指導をうけており、取得までの期間やトータル経費を勘案すると、外部の指導をあおぐことが現実的だといえよう。
 また、所属団体での便宜や行政による費用補助など、さまざまな施策も講じられており、それらの情報収集も欠かせない。
 取得までの期間は、平均すると一年半程度といわれているが、これも各企業の実情によって異なる。マニュアルの整備や内部監査員の養成、審査などで二年以上を要したというケースも実際にある。
 いずれにしても百万円単位の費用がかかるのは事実であり、それだけに「よそで取得しているから当館も」といった安易な気持ちでは、対処できない投資といえそうである。言葉を換えれば、それだけの費用と労力を投入する以上、実効の伴った投資にしなければならない。看板料的な発想で「登録料」と捉えるのであっては、実効を得られないともいえる。
 この点に関して本シリーズでは、認証取得へ向けた経営者の姿勢を繰り返し述べてきたわけである。つまり、経営のトップが「何のためにISOの認証を取得するのか」を明確に意識することが、実効に大きく関わっている。これがないと、いわゆる「高い買い物だった」で、埃を被るだけの看板に終わる懸念もある。
 実効へ向けた課題を整理してみると、大きく分けて三つある。一つが品質システムの作り方である。大企業や他社の真似ではなく、実情にあったシステムを構築することが欠かせない。 二つ目は経費の問題である。取得のために相応の費用がかかるのはやむを得ないが、費用対効果で「高い買い物」にさせないことが肝要である。また、定期審査のたびに不要なコストを出費させないための努力も欠かせない。
 三つ目が実効を引き出すための運用である。これは前二つの問題ともかかわるが、要は形骸化させないことである。看板的な発想では、この点がとくに問題となる危険性を秘めているともいえよう。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
(つづく)