「旅館経営マニュアル」 その25
経営には「2つの視座」が必要 |
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経営者によるトップダウンとリーダーシップの発揮は、経営者であれば当然のこととして誰もが望んでいるはずである。いわば、「いまさら」の感もあるが、現実には一筋縄ではいかない永遠のテーマでもある。
その最たるものが、経営手法である。ISOとは若干話しが逸れるが、かつて「経営手法に正解はない」といい切る経営者がいた。なぜならば、「時代が変われば、それに相応しい経営手法をそのつど見出し、柔軟に対応していかなければならないからだ」と、その経営者はいう。
ところが、前号でも述べたように、変化に対しては抵抗を示すのが人の常でもある。この抵抗が、「なるべくならば余計な摩擦を起こしたくない」あるいは「それによって事業が遅滞すれば元も子もない」といった弱気を表面化させてしまう。この点については、一般的な心理学の例をあげなくとも、日常的な経験において少なからず実感もあるはずだと思われる。
さて、ここで述べたいのは、こうした弱気の話ではない。変更や変革を考える時に二つの視座が必要だということである。パターン的に捉えると、企業内で変化を志向した時に、仕組みの変化とそれに携わる人間の変化があるということである。
例えば、ISOの導入を考えてみよう。ISOの認証を取得しようとするとき、要求事項に基づくシステムの再構築が必要となる。これは、従来とは異なるスタンスや運用が、当然ながら必要とされる。
すでに述べてきたようにISOは、企業サイドのスタンスではなく、ユーザー側に視点を置いたものである。そうなると、システムの面では、極めて大胆な変革を余儀なくされよう。文書化のように、それ以前は補完的な役割と捉えていたものが、一躍システムの前面に据えられるものも出てくる。このような変革が一つ目の視座である。
これに対して二つ目の視座となるのが、日々の業務で実際に携わる従業員の意識の変革である。企業に対する思惑は、経営者と従業員とでは異なる。この違いが、変革時に一時的な歪を生じさせることもある。だが、歪に囚われていては、変化に対応する経営は難しい。多少乱暴ないい方だが、「システムの変革は大胆に、多少の歪は気長に」といった発想がリーダーシップの発揮では必要である。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
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(つづく) |
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