「旅館経営マニュアル」 その22
「ISO認証」は看板ではない |
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ISOによって旅館・ホテルの品質管理システムは大きく変わる。そこでの経営者の役割は、極めて大きいことを本シリーズではしばしば指摘してきた。実際にISOを導入した企業の経営者から「何か新しい取り組みを始めた感じで、自分自身を含めて社内が変わってきた」との感想を耳にすることがある。
こうした感想は、経営者が真剣に取り組んでいる場合であり、ISOの認証取得を、単に看板程度のものと受けとめているケースでは、文書化による書類づくりに忙殺されるといった感想しか出てこない。つまり、ISOを導入し、経営改善が果たされるためには、経営者の認識がいかに大切かということである。
ある企業(宿泊業ではない他のサービス業)の経営者から、ISO導入のポイントを聞いたことがある。その経営者は、「私自身が責任をもって決断した」といい切った。「経営者の決断」とは、けだし核心を突いた言葉である。
いま、旅館・ホテル業界のみならず、日本のあらゆる産業分野で厳しい経営環境に苦慮している。当然、経営者であれば「何か手を打たなければ」との思いを抱いているはずである。ところが、従来の発想法に縛られていると、どうしても出口が見えてこないのが、現今の状況だといえよう。
そこで、従来の発想とは異なる視点からの、抜本的な構造改革が必要となる。だが、構造改革に取り組むためには、想像以上に「大胆な決断」が求められる。その決断をするのが、まさに経営者である。
では、「決断」とは一体何か。決断を下すには「熟考を要す」と誰もが考える。もちろん、こうした姿勢は決して否定されるものではないし、直感だけで闇雲に断を下すのは暴挙に等しいともいえる。しかし、熟考も単に堂々巡りの論に陥っているだけならば、時間の浪費でしかない。それは、現下の状況で許されるものではないはずだ。決断を先延ばししても、あたらチャンスを逸するだけで、他力本願での事態の好転は期待薄といえよう。
本シリーズでは、ISOと従来の日本型発想の相違点として、前者はトップダウン、後者はボトムアップと記したことがある。いま、経営者のトップダウンによる決断が、あらゆる場面で求められている。企業における大胆な決断は、経営者にしか下せないからである。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
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(つづく) |
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