「旅館経営マニュアル」 その21
業務プロセスの文書化を |
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ISOはプロセス管理だと前号で述べた。さらに付言しなければならないのが文書化である。業務プロセスを文書化しなければならない。いわゆるマニュアルである。全員が経営方針を共通の基盤として、それぞれに与えられた業務を確実に遂行するためには欠かすことができない。この点は、さほど難しく考える必要はないだろう。ISOで馴染み難いのが「公開」という発想である。
「マニュアルは社外秘なのでお見せできません」
かつて、こんな話がしばしばあった。提供されるサービスは、サービスが行われた時点で内容が「公開」されたのに等しい。それなのにマニュアルは公開できないという。細かな配慮の仕方など、第三者に知られたくない気持ちが作用するのも分からなくはないが、パテントや企業秘密の公開とはニュアンスが違う。多少斜に構えた見方をする識者から、「本来は提供すべく定められているサービス内容が、実際には確実に履行されていないから見せられないのではないか」と聞かされた。これは、うがち過ぎのようにも思えるが、逆に秘密にすることが奇異にも思える。
さて、本題は文書化して第三者への公開を前提とした考え方である。なぜ公開するのかといえば、第三者による「審査」が、ISOでは原則になっているからだ。裏返せば、一般の利用客にとって提供されるサービスは、そのときになるまで分からない。言葉どおりお客の立場で提供されているか否かは、結果でしか判断できないわけだ。もちろん、結果に満足できれば問題はない。しかし、クレームが発生しているのは事実だし、それを噂で耳にすることもある。
第三者による審査は、その意味で一つの「安心」にもつながる。すでに述べてきたように、従来の考え方は、どこまでも企業側に立ったものだった。ところがISOは、利用者の側に視点を置いている。
さらに、不適切な部分が見つかれば、どんどん是正し、マニュアルを改訂していくことにもつながるはずだ。これは経営者だけでは手が回らない部分でもある。内部の監査、第三者の審査など、開かれた文書を必要とするのは、こうした幾つもの理由による。
クレームを防ぐために幾つものフィルターを用意するのは、決してやぶさかではないはずである。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
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(つづく) |
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