「旅館経営マニュアル」 その17
[PDCAサイクル」とは
Press release
  2001.08.11/観光経済新聞

 本シリーズでは、従来の日本的ともいえる企業内の仕組みに対して、ISOが求める「品質管理の能力をシステムとして捉える」との視点を、実情に照らしながら検証を試みてきた。そこで今号では、若干の整理をしてから、次へ進みたいと思う。
 これまで述べてきた品質方針の策定、社内システムの整備、実行内容のチェック・検証、文書化による対応策への展開などは、箇条書きをすると以下のようになる。
 P(Plan)=計画
 D(Do)=実行
 C(Check)=チェック
 A(Action)=見直し
 これは、ISOで基本ともいえる「PDCAサイクル」である。
 現実の場面にあれはめてみると、例えば次のように考えられる。
 まず「お客様第一主義」の企業姿勢、いわゆる品質方針を、経営者がリーダーシップを発揮して策定したうえで、これを経営・運営の手法としてシステム化することになる。その際、実際の運用にあたる各部門が参画し、経営方針に則しながら実情にマッチした「サービスの方法」がシステム化され、さらに実際に実行したうえで事実に基づく判断・検証が行われる。そこでの判断で妥当性に欠ければ、いわゆるクレーム要因などについては、継続的な改善がなされ、最初に掲げた「お客様第一主義」が図られる図式になる。
 また、ISOでは「仕入業者・委託業者」についても、一連の流れのなかでシステムの一つとして明確な位置付けがなされている。これは、内部的に細心の注意を払っても、クレーム原因が外部から仕入れたものに起因すれば対処できないわけで、そうしたチェック機能もシステムの重要な役割となっている。余談ではあるが、製造メーカーの下請け会社が、親会社の要請でISOの認証を取得しなければならないケースなどは、こうした事情によるものともいえる。 つまり、計画の策定(P)からサービスの提供(D)、提供したサービス内容の判断・クレーム対応(C)、判断に基づく継続的改善(A)がサイクルとして循環し、提供するサービスの品質が維持・向上されていくものといえる。したがって、前号で示したように決めたことがらが「建前」として形骸化する余地はない。ここが従前の組織と大きくことなる点ともいえよう。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
(つづく)