「旅館経営マニュアル」 その14
クレーム識別の仕組みを
Press release
  2001.07.21/観光経済新聞

 クレームは、常識的に考えて「いい」分けがない。したがって「悪い」ものとなる。ただ、前号まで述べてきたように、細心の注意を払っていても「発生し得る」のが現実である。しかし、この現実を安易に認めるわけにはいかないのも、また事実である。一つの考え方として、「いい」あるいは「悪い」といった単純な評価を見直す方法がある。
 極論ではあるが、「悪い」と発想するために、そこから二次的な弊害の発生するケースがある。最悪なのが「臭い物にフタをする」意識である。発生してしまったクレームを、現場レベルで「とりあえず収める」といった場合、大半の処理はこれで完結してしまう。上司への報告は、「うまく収まった」が関の山で、悪くするとクレームの発生自体が闇から闇へ葬られてしまう。もちろん経営者の耳には届かない。これが類似するクレームの発生、あるいは同一人に多発する大きな要因になっているわけだ。
 では、どのように対処するのか。大切なことは、「いい・悪い」といった単純な評価ではなく、発生したクレームの内容が、本来提供しようとしているサービス内容に比べて、どのような違いがあったのかを、内部的に識別する仕組みに照らし判断下すことである。
 この点をISOの視点で捉えると、次の三つのステップに象徴できよう。
 第一ステップは、どのようなサービスをどう提供するかといった方針をつくる計画段階である。
 第二ステップは、方針に沿って実行する段階であり、方針を現実の場面にあてはめた実証といえる。
 第三ステップは、第二ステップの実行が方針に沿って確実に履行されているか否かを判断する検証段階である。
 このうち現実に直結する第一・二ステップは、多くの場合に実践されているようだ。つまり、方針を決めて実行するまでのステップは、相応に現実性を帯びているために分かりやすいが、検証段階になると理屈が先行するような錯覚にみまわれ、現場至上でなくとも、ややもするとおざなりになりがちである。
 ところが、顧客の満足度をチェックし、経営者による見直しといった第三のステップがなされなければ、計画・方針もその実践・実行も、本来の目的を達成しているかどうか分からないわけである。これではクレームがなくならない。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
(つづく)