「旅館経営マニュアル」 その13
クレーム0を目指せ |
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本稿では「お客様第一主義」をしばしば取り上げて来た。前号で示した「どんなに注意をしてもクレームは発生し得る」との観点は、視点を換えると利用客の側に立った「お客様第一主義」ともいえる。
つまり、サービスを提供する側が「かくあるべき」と型にはめるのではなく、サービスを受ける側の「こうして欲しい」といった期待感に限りなく近づけようとする姿勢である。
ただ、留意すべき点は、クレームの発生は認めるものの、あくまでも内部的な観点であることを忘れてはならない。クレームとは、商品に例えるならば不良品・不適合品であって、それが製造されてしまうことはあり得るが、ユーザーに渡ってしまうことでいいパン的なクレームとして認識される。この「渡ること」を避ける企業内の仕組みや経営姿勢こそが、ISOでは求められていると理解する必要があろう。
これに対して旅館商品では、渡す瞬間に多くのクレームが発生する。完全なはずの商品でさえ、渡し方によっては利用客の満足度を損なってしまう難しさがあるともいえる。
旅館・ホテルと利用客を結ぶ重要なファクターは、施設・料理・サービスである。しかも、これらが個々に評価されるのではなく、総合的に作用しあったトータルとしての「かたち」が、旅館商品だといえる。
前出の一般的な商品・製品の場合、原料の仕入・加工、そして出荷といった三段階を経てユーザーの手にわたる。旅館商品の各ファクターも同様の三段階を経て利用者に供される。
個々のファクターは、それぞれ重要な意味合いをもっていることはいうまでもないが、トータルな印象そのものが評価を大きく左右する以上、ISOの基本的な要求事項である経営方針・品質方針がいかに重要であるかが理解できよう。この分野は、再三述べてきたように、経営者のトップダウンでしか示し得ない性格のものだともいえる。
さらに、こうした視点にたってみると、従来の発想では、それぞれのファクターが有機的にからみあっているとの認識に乏しかった感が否めない。いい換えれば、個々の現実的な対応には目を向けていたが、サービスを「提供する仕組み」としてのトータルな視点が欠けていた。これが、ISOで求められる品質方針であり経営姿勢だといえよう。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
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(つづく) |
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