「旅館経営マニュアル」 その11
「結果オーライ」の発想防ごう |
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責任と権限を考える上で常につきまとうことは、失敗をしたときの対処の仕方である。極端ないい方をすると、責任をとるのが嫌で権限の範囲である業務さえ履行しないケースが、時に発生してしまう。責任の所在がウヤムヤな中で何となう処理されることは、結果として事後の改善が放棄され、同じ間違いを発生させる温床となってしまう。
例えば、日常的に使われる「結果オーライ」といった発想につながる。仮に間違いを起こした場合でも、それなりに丸く収まれば「一件落着」と胸をなでおろしてしまう。もちろん、それで問題の発生源を絶てたとは誰も思っていないはずだが、こうした経験の繰り返しによって体得した対処方が、いわゆる現場経験として幅を利かせているのも否定できない。
ここで考えねばならないことは、人間の行うことに「絶対」などあり得にということだ。どんなに確実を期しても「満に一つ」は否定できない。バックヤードなどに掲示される「クレーム撲滅」などの標語が、ややもすれば逆の意味で捉えられかねない。現実はクレームの発生を「やむを得ない」といった受けとめ方である。ゆえに、こうした標語が無意味であると短絡した発想も生まれてくるが、ここで問題となるのは標語の是非ではない。
標語が「絵に描いた餅」に終わってしまう要因は、日本的な発想法ともいえる「建前と本音」が、その一つとしてあげられる。
ひるがえってISOでは「文書化」が大きな意味合いをもっている。ところが、文書化された標語を「建前」と受けとめてしまう発想を払拭できなければ、こうした文書化も意味がなくなってしまう。そこに、経営者を含めた全体としての意識改革が必要となる。
大切なことは、従来の経験則を払拭することである。極論をいえば、クレームや不測の事態は「発生しうる」といった認識のもとで、その発生自体を否定しないことである。といって、それだけでは全く意味がない。次にクレームは、不本意であって「発生させてはならない」と明確に認識すること。さらに、クレームが発生した場合の「対処方法」をきっちりと定めておくことである。
いずれも当たり前のことであり、経験則の中で対処してきたともいえるが、建前ではなく本音としてシステム化する必要がある。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
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(つづく) |
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