「旅館経営マニュアル」 その9
「責任と権限」を問い直そう |
Press release |
|
責任と権限の明確化は、ISOを考える上で欠かせない要点である。すでに述べてきた経営者よる「経営方針」と「品質方針」の明確化・決定は、経営者のなすべき責任と権限と端的に示した一例といえよう。
この経営方針沿って、業務を遂行するための目的・目標が設定される。また、業務の遂行には組織が不可欠であり、この組織においても責任と権限が明確でなければ、スムースな運営は図れない。
このため、ISOで求められている「品質システム」(経営システム)とは、こうした責任と権限による「仕組み」と理解できる。要は、責任と権限という大テーマを、改めて問い直すことが、ISO認証の取得へ向けたプロセスの中で欠かせないわけだ。
ひるがえって現状の職場における責任と権限を考えてみよう。日常しばしば登場する会話の一つに、次のようなものがある。
「しばらくお待ちください。上司に相談して…」
「私では判断できかねますので…」
こうした弁明をしなければならないケースは、果たしてどれだけあるのだろうか。回答すべきことがらが分かっていても、権限が明確でないために即答を避けるケースが少なくないはずだ。また、回答してしまった場合、責任所在の不明瞭さが、回答をたらい回しにすることにつながることもある。
余談ではあるが、責任体制の一つとして、連帯責任といった極めて日本的であいまいな責任の取り方がある。一見すると関係した全員で責任を負うかのようにもみられるが、実は責任の所在をウヤムヤにしてしまうことが少なくない。乱暴な言い方をすれば、無責任な責任体制といえる。
本題に戻るが、こうした体制が業務の迅速化をさまたげ、ときにはクレームの上塗りに発展する懸念も秘めているといえる。
では、責任とはどのようなものか。結論からいえば権限と一体の関係にあり、どこまでも個人が負うべきものであって、組織(部署)などが負える性格のものではない。つまり、組織の一員に遂行すべきどの業務を与えるかを、組織運営の観点から判断し、個人として意思決定を行える範囲を明確にすることが前提となる。したがって、前出の連帯責任などは成り立たないともいえよう。この辺りの仕組みがISOでは重視される。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
|
(つづく) |
|