「旅館経営マニュアル」 その7
品質方針明確かがCS高める |
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ISOは、安心感に対する消費者の要求であり、第三者がそれを確認する意味合いが大きい。ここで品質に対する安心感とは何かを考えてみたい。
かつて、日本の産業界では、いわゆるQC活動が大きな成果をあげていた。旅館・ホテルでもQCサークルが組織され、それぞれのセクションで品質向上への努力が続けられてきた。
どちらも品質を捉えている点では同質のものと受けとめられそうだが、実は根本的な違いがある。ISOでの品質は、消費者の立場にたって品質のレベルを確認すものである。これに対してQC(TQM)は、製品やサービスを提供する側が、自らの立場で実施するものである。つまり、品質管理を消費者の立場で捉えるか、企業の立場で捉えるかといった根本的な違いがある。
QCのような企業やそこに働く従業員の自主的な品質管理に向けた活動は、ややもすれば理想的な形のように思いがちだが、一方で危うさがつきまとうのも否めない。自主的な品質の維持・向上は、何らかの要因で停止する可能性を内包しているからだ。
これに対して既定の品質をシステム的に維持。管理するISOの手法では、常に一定のレベルが維持されることになる。これが消費者への安心感につながるといえよう。
「お客さまに満足をしていただくためには、従業員一人ひとりが、さまざまな場面でその場にもっともふさわしい応対をすることが大切です」と、ベテランの支配人が指摘する。確かにこれは最も重要なことの一つである。顧客が何を欲しているかを的確に把握し、それを実行したうえで満足の度合いを高めるには欠かせない。
大切なことは、顧客が「何を要求しているのか」といった要求に的確に応じることである。この要求部分が満たされなければ、満足を高める小手先の工夫をどんなに凝らしても、高い評価は得難いといった一面がつきまとう。気配り・心配りなどにおいて、理想的と映る旅館・ホテルでさえクレームが発生するのは、要求と満足を混同した基本的な認識の違いに起因するケースが多々ある。
したがって、顧客の「要求事項」を満たすには、品質方針の明確化が欠かせない。このスタンスがなければ、満足度を高める自主的な努力も空回りしがちだ。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
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(つづく) |
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