「旅館経営マニュアル」 その4
ISO取得の様々なメリット
Press release
  2001.05.12/観光経済新聞

 旅館・ホテル業界だけでなくサービス業では「お客様第一主義」が根底にある。その理念を確実に遂行するための背後に求められるものが、ISO的にいうならば「経営方針」であり「品質方針」である。これまでいわれてきたCS(顧客満足)は、いわば理念であり、具体化にはさまざま施策を講じてきた。
 しかし、理念は確実に遂行されて、はじめて意味をもつ。どんなに高邁な理念を掲げても実行できなければ、しょせんは絵に描いたモチでしかない。実行には二つの大きな要素がある。一つは、確実に実行されているか否かをチェックする機能である。もう一つは、実行することが旅館・ホテルに利益を生み出すかどうかという問題だ。理想的な理念を掲げて確実に実行しても、実行する側に利益がもたらされなければ何の意味もない。
 ISOは、その国際標準の認証を取得することで、社会的な認知をはじめとする営業戦略的メリットがある。これが利益の一つである。さらに、品質方針を明確にしたうえでチェック機能が作動することにより、サービス商品のクオリティー維持に大きく貢献する。品質維持の確立は、視点を換えると、不測の事態から企業をガードする意味合いも含まれている。この利益は、前者を上回る貢献度ともいえよう。
 ここで肝心なことは、前回指摘したように、ISOの認証取得のプロセスにおいて、経営者が根幹である「経営方針」「品質方針」を十二分に自己検証するという点である。実際の認証取得作業は、特別編成の社内プロジェクトチームが社外のコンサルタントと共同で行うのが一般的だが、前二項目だけは経営者でなければ作成できない。これが、品質維持のミソともいえる。
 昨年、大手食品メーカーの事故があった。企業が大打撃を受けたこの事故では、企業そのものは必要な国際基準(HASP)の認証を受けていた。結果としては、チェック機能が的確に作動していなかったようだが、その背景に認証取得へ向けた経営者の姿勢が問われる要素があったことも、想像に難くない。
 ISOの認証取得は、取得によるメリットだけでなく、そのプロセスにおける全社的な意識改革、確実に遂行することによる企業ガードなど、さまざまな恩恵を旅館・ホテルにもたらすといえよう。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
(つづく)