「旅館経営マニュアル」 その1
「ISO」は赤字脱出ツール
Press release
  2001.04.14/観光経済新聞

 いま、われわれの生活は、好むと好まざるとにかかわらず、グローバル化の波に洗われている。いわば生産・流通・消費のどの局面においても、国際化している。そこで、国境を越えて品質面での一定の目安が重要となり、いわゆるグローバル・スタンダード=国際標準の必要性が生まれた。
 ISOは、標準化の国際機構(International Organization for Standardization)が、そうした意味から製品やサービスの品質において、必要な諸事項を規格化し、認証するものである。
 身近なところでは、かつてフィルムの感度を表示していたASAが、いつの間にかISOに変わっていた。また、旅館・ホテルにおいてもISOの認証を取得する施設が出現しはじめ、注目されるようになってからでも数年が経過している。
 こうしたISOについては、認証取得の必要性が強調されるようになった当初から、いくつかの疑問と誤解があった。
 国際化と密接な関係にある一般的な工業製品では、親会社の支持で部品をつくる子会社・孫受会社であってもISO認証が必要条件になった。外国へ製品を輸出するのは親会社であっても、部品として製品に組み込まれる以上はISOが必要ということだ。
 一方、サービス業にこれを当てはめると、すでに国や地域、地方によって一定のルールのようなものが、それぞれの業種にできあがっている。とりわけ、日本の国内で日本人を相手にサービスを提供するには、あえて国際規格にこだわる必要があるのか、といった素朴な疑問も生まれた。
 誤解の根底には「ISO=国際標準」といった捉え方がある。つまり、ISOは「物差し」のような規格そのものと受けとめられていた。ところが、冒頭の「必要な諸事項を規格化」との意味合いは、「品質管理の能力をシステムとして捉える」といった程度に理解する必要がある。いわば「どう管理しているか」にポイントが置かれたものであり、工業規格のような物差しと同一視した場合に誤解が生じる。
 そうした観点でISOを捉え直すと、旅館ホテルの管理体制にも大きくかかわる要素がある。そこで本稿では、ISO認証取得のノウハウではなく、ISOの周辺事情と経営者・企業としてのかかわり方を中心に、赤字経営から脱出して黒字化を図るツールの一つとしてISOを考えてみたい。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
(つづく)