「旅館経営マニュアル」 その6
消費者不安を払拭するために |
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「大切なのは、従業員一人ひとりが自分の仕事を理解し、レベルアップを常に心がける姿勢があれば、お客さまの満足は自然な形で高まっていくはずです」
従業員のミーティングで出された模範的な意見である。この姿勢は高く評価できるし、指導的立場の人間にとって、従業員のこうした意見は心強い。結果として高質なサービスの提供につながるはずだ、と考えるのも当然である。
ここで考えなければならないのは、現実の結果だけではなく、結果を導き出す手順がきちんと管理されているか否かである。顧客に提供されるべきサービスの質は、従業員の感情や体調などの個人的な要因によって左右されるのは論外だが、それでも多種多様の顧客と絶えず接していれば、ときには不手際の起きる懸念も皆無とはいえない。
つまり、旅館にとって大切な「結果」を、従業員の資質に委ねきることには、大きな危険性が潜んでいるということである。言葉を換えれば、そこに適切な管理システムが必要だということである。
工業分野をはじめさまざまな産業分野でISOが重視される要因の一つとして、ここでいう「結果」へ捉え方があげられる。消費者側からみた結果とは、サービスをされたその時点の質、あるいは買った商品の品質である。
どんなに高質なサービス、優良な商品といわれるものであっても、消費者が手にするのは、その中のたった一つである。たとえば、提供する側は百人に気配りをしていても、受ける側は一人ひとりである。九十九人は満足できたが、たった一人は満足を得られなかった。その一人にとって、他の九十九人の満足は、何の意味も価値もない。
そうした不安が消費を妨げる要因になる可能性がある。これは、百人の中の九十九人が買い、一人が買わないという意味ではない。満足できるはずの九十九人にとっても、自分が「百人中の一人」になる可能性があることを意味している。結果として、誰もが買わないことにつながる。
ISOは、消費者のそうした不安を払拭させるために、「結果」ではなく「結果を生み出す品質システム」を第三者が確認するものともいえる。背景には「安心感」へ消費者の要求があり、ISOへの関心の高まりも、消費者の要求が後押ししていると考えていいようだ。 (続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)
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(つづく) |
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