「社員教育」 その30
環境整える人事考課を
Press release
  2001.04.07/観光経済新聞

 経営コストを下げ、一方で接客サービスの向上が求められ、さらに社員への還元率を高めるトリプル命題は、二十一世紀を生き抜くうえで、もはや避けては通れない。本シリーズでは、社員教育に関わる分野を中心にさまざまな角度から捉えてきた。そして、最終的には人事考課の必要性に帰結したといえる。最後に、人事考課のフローを示しておきたい。
 これまでに述べた「やればやるだけ返ってくる。やらなければ返ってこない」との事例で示したように、社員も基本的には人事考課の導入を求めていると理解できる。ただし、そこには取組み姿勢にバラツキがある。
 そこで、最初に行うのが「社員自己考課」である。経営側で求める社員像と、社員が自ら意識している社員像には、少なからぬギャップがあり、それらを見定める材料にもなる。
 次に、直属の上司による「所属長考課」がある。日常の業務遂行状態をもっとも身近で把握している所属長が、客観的に査定するものだ。同時に、所属長は自分自身も管理者としての査定を受けることになる。
 また、上記の二つの考課を実施するには、所定の「考課判定記入票」を作成することが欠かせない。個々の実情に即した効果的なフォーマットづくりには、プロの指導をあおぐ必要もあろう。
 これらを踏まえて経営者を含む「考課委員会」が、客観的な立場から総合判断を下すことになる。ここでの査定では、単に書面の上だけでなく、実技面での考課を盛り込む必要もある。
 しかし、最終的な評価がここで決まるわけではない。考課委員会の結果を受けて、社員一人ひとりとの「個人面談」が行われる。最初の「社員自己考課」と「考課委員会」までの客観的考課の結果に基づいて、社員と考課委員会が結果を討議する。問題点を指摘するとともに、社員に目的意識を与えることが、ここでの大きな目的でもある。
 以上を経て最終的な査定が下される。実際には、決定した報酬(給与・賞与)と設定した次の達成目標が、社員自身と所属長に伝えられるわけだ。
 報酬に見合った仕事を成し、成果に対して適正な報酬を与える。そこには、仕事に対して全知全能を傾注する姿勢がなければならない。そうした環境を整えるのが人事考課であり、社員教育の目指すところであると考える。
(おわり=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)