「社員教育」 その25
“新種”のクレーム対応 |
Press release |
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クレームに対応した基本マニュアルの構成について、前号では事前に想定できるケースを「5W1H」の原則に則り考えてみた。しかし、現実には「こんなクレームがあったのか」と思われるような"新種"のクレームが次々と発生する。これらに対して事前に想定していた対応方法では、十分に対応できないのが事実である。
ここで必要なのは、現場で処理する場合を前提にした「緊急対応マニュアル」ということになる。昨今、マスコミにしばしば登場する"危機管理"といった言葉は、国家の安全保障といったレベルの問題だけではない。数カ月前に発生した大手乳製品メーカーの事故対応などでは、クレームへの対処、報道への対応、事後の内部処理などでみせた"お粗末"でも枚挙にいとまがない。まさに企業の命運をかける大事件に発展させてしまったのは、緊急対応の不手際が大きな要因だった。
といって、こうした事態を想定し、かりにマニュアル化しておくとすれば、これは膨大なものになってしまう。まして、限られた商品アイテムのみを管理すれば"コト足りる"メーカーとは異なり、生活に必要な衣食住のすべてを提供する旅館・ホテルにあっては、想像を絶するものになり、非現実的とさえいえよう。
したがって、現場での対応は、@状況分析A原因究明B状況判断・対処の手順を明確に示す「応急処置」を中心に考える必要がある。なかでも状況を判断し対処することが中心であり、原因の詮索はケース・バイ・ケースで柔軟に対処する。
同時に、これらを迅速に処理する最低限の仕組として、担当者と管理職との間に緊急対処の連絡系統が欠かせない。
また、現場で一応の処理が済んでも、状況に対する分析と判断、原因などのクレーム記録を確実に残し、さらに経営レベルからの分析と検証、それらを踏まえた防止措置、内部処理(例えばスリーアウト・チェンジなどの処分を含む)や客側への謝罪などの外部処置を的確に行う必要がある。
さらに、これらの一切を記録化し、同時に基本マニュアルに組み入れることも、以後の業務遂行に欠かせない。
肝心なことは、ここでも文書化し記録することである。これによって経営トップは、自館の実情が常に把握でき、そこに新たな経営のヒントが含まれていることを認識することである。 |
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登) |
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