「社員教育」 その21
未熟か横着か見極めを
Press release
  2001.01.27/観光経済新聞

 クレームの発生につながるミスの防止策として「スリーアウト・チェンジ」の方式は、ミスに対して二度の復活チャンスを与え、三度目は三振アウトとなる。一日休職や自習、減給処分で悔しさと企業メカニズムを再教育するわけである。
 なぜ三度なのか。ここで大切なことは、クレームを誘発するミス対しての必罰的な要素だけでなく、ミスを犯した当事者の資質を企業側で明確に把握する意味合いもある。つまり、ミスが発生したときに、その担当者に技術や知識がないのか、それとも技術はあるが本人が横着を決め込んでいるのか、この二つを見極める必要があるからだ。
 「こういうクレームがあったよ。これは起こしてはいけない」
 所属長が意識の甘さを指摘する一回目の注意は、同時に注意をする側が当事者の資質や技能レベルを判定する段階でもある。ここでの注意の与え方は、判定に基づく適正さが欠かせない。いわば、注意を与える側の技量や認識も問われる。
 余談ではあるが、チェックリストの項目で「会社に提出する最終のサインが形だけのものであれば、いずれは形骸化して所期の目的が果たせなくなる」と指摘したが、所属長がそのような資質の持主であれば、適切な注意が与えられる云々以前に、“バレたのは運が悪かった”といった逆効果につながりかねない。
 つまり、当事者に技術や知識がなかった場合は、それを見抜いた所属長による適切な注意が与えられることによって、当事者が自ら気付き改善の道を進めるはずである。
 ところが、同じミスを二回やるというのは、技術や知識の有無ではなく、横着をした結果といえる。さらに突き詰めれば、仕事の手段が目的に摩り替えられた形になっている。
 例えば「捌く」といった姿勢である。「手際よく捌く」などといえば、いかにも有能なように思われがちだが、捌かれる客側の心証は快いものではない。あいさつの一つにしても、目的は「お客さまに礼の気持ちを伝える」ことであって、これが手段化すると、どんなに丁寧な言葉を散りばめても慇懃無礼な不快感しか伝わらない。
 二度目の同じミスは、こうした慣れや手段の目的化が引き起こしている。そこで、最高責任者が目的を改めて諭すことになる。
 これが三度目になると技術や知識の有無では済まされない。企業ルールを無視した“重罪”である。したがってペナルティーを科し、反省を促すしかない。「スリーアウト・チェンジ」である。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)