「社員教育」 その18
経営者の耳に届かない
Press release
  2000.12.16/観光経済新聞

 クレームが経営者の耳には届かず、闇から闇へ葬られるのは最悪だが、現実には往々にしてありえる。これこれを防止するには、耳に届くシステムを構築する以外にない。そこで必要なことは、誰がいつ、どんな作業をし、ミスを犯した場合はどう処理したかを明確に把握する方法である。これができなければ、次の一手は打てない。
 こうしたシステムづくりで考慮しなければならないのは、各論ともいえる対処方法への基本的なスタンスである。ただし、現象としてクレームを引き起こした“当事者=犯人”を特定し、その人間に責任を取らせるといったスタンスではない。
 大切なことは、クレームの発生を未然に防ぐ社内意識の醸成であり、強引に抑え込むことではない。強引に抑え込んだ場合、想定したケースとは違うクレームの発生に際して、「マニュアルに示されていなかった」「教育課程で学ばなかった」などの逃げ道を認める要素になってしまう。
 現実には、企業側からの処断を回避するために、クレームを隠蔽する方向に走らせてしまう。俗ないい方をすれば、「見つからなければ隠しとおしてしまう」といった姿だ。
 一方、未然の防止意識には、あらゆるケースへの対応性が含まれている。いわば、手段と目的を明確化したシステム構築である。
 したがって、目的は当事者の処断ではなく、発生原因を突き止めて処置するということ。当事者の処断は、クレーム撲滅の目的遂行に向けた手段と位置づけられる。
 しかし、方法論としては、クレームが企業にとって「痛み」である以上、当事者にもその痛みが伝わる仕組を、システムが内包していなければならない。何らかの痛みがなければ、ルールの拘束力は薄れてしまう。といって拘束力が強すぎると萎縮を招き、創造性などを阻害することにもなりかねない。この辺りの兼ね合いが難しいところだ。
 そこで、業務の遂行状況を確実に把握し、記録として残せるチェック方法が必要になる。冒頭の「誰がいつ、どんなミスを犯し、どう処理したか」を明確に把握する方法である。さらに、「痛み」を知り、同じ痛みを繰り返し起こさせないための注意の与え方、現実の痛みを体感させるペナルティーの与え方、必要に応じた再教育など、多面的な視座に立ったシステムづくりが、クレーム撲滅には必要である。
(つづく)