「社員教育」 その14
教える側の姿勢明確に |
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日本の企業内教育は、日常業務に基づいた訓練であるOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)と自己啓発への補完などが柱となってすすめられてきた。とりわけOJTは、もっとも基本的なものといえる。
OJTを真剣に取り組む場合、こんな光景がしばしば見受けられる。
「簡単なことだが、この部分は基本であって、きっちり身につけなければならない。それぐらいわかっているはずだ」
現場には二人の人間がいる。叱責する側とされる側だ。しかし、どちらもOJTの受講者ではない。ここに、OJTの一つの姿がある。
簡単な基本動作でミスを犯したのは、もちろん受講者なのだが、叱責されているのは研修を担当していた“教官”といえる先輩である。叱責している幹部社員がいう。
「彼女(受講者)は、何が大切なのかが分かっていない。だから、あなたにつけて学ばせている。彼女がそれにミスを犯したのは、あなたが大切さを教えないからだ」
ミスの内容はともかく、教育を施すうえでは、システムとしてこうしたスタンスが大切である。
また、象徴的なシチュエーションとしては、も一つある。
「この仕事は、わたしにはまだムリです」
「とにかく、やってみなさい」
こうして受講者に与えられた仕事は、入込み状態を示す伝票の整理・記入だった。確かに、館内の業務全般にかかわる大切な書類であり、新人には荷が重いかもしれない。腰の引けている受講者に向かって、毅然として実行を命じた。
これには理由がある。そこで与えた仕事の結果は、あとで検証をすることができるからだ。あとでチェックをできるものは、思い切って受講者本人にさせてみることも必要なのである。
これに対して、その場でなければチェックできないものもある。例えば、あいさつの仕方などは、その行為があった直後でなければ、実感をもって身につけさせることができない。こうしたことがらは、現場の責任者である“教官”が、必ずその場で指導することが大切である。
つまり、OJTで肝心なことは、教える側のスタンス・心構えを明確にしておくことと、あとでチェックできること、その場でないとチェックできないことのタイミング、この二つの使い分けにあるといえる。 |
(つづく) |
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