「社員教育」 その10
理解速度の違いに注意を |
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旅館・ホテルの実情にあったマニュアルを完成させれば、教育現場での次が使い方となる。
そこで考慮しなければならないのが、個人によって教育されたものへの理解速度に違いがあることだ。もちろん、この違いにこだわって個別教育をほどこすとなると、労力も時間もかかりすぎる。標準的な教育段階は以下のように例えられよう。
人間の頭を一合の水が入る器とすれば、その器に十合の水を入れようとするのが教育だ。当然ながら、一度に入れようとすればあふれてしまうが、一合を入れて飲んだら次の一合という順序で進めれば、最終的には十合の水が入ることになる。いわば、エッセンスの吸着・吸収を待ちながら徐々に入れるわけだ。単純な理屈だが、実際の場面では、これを忘れて一気にいれようとする。とくに、新しい業務にチャレンジする場合は、この方法が欠かせない。
こうした教育過程におけるマニュアルの使い方は、教育者がそのマニュアルに沿って、いわゆる講義として理論的に示す方法と、現場での現地トレーニングを並行させながら教えることがある。さらに大切なのは、学んだことを自習させることだ。
教育課程での自習とは、個人個人の能力差を埋める大きな意味をもっている。前述の個人差への対応は、自習によって代行させることもできる。能力の高い人は一日で覚えるが、二日三日とかかる人間もいる。そうした個人差については、理解するまでの一定期間を待つことも大事だ。ただし、漫然と待つわけではない。
理解の速度を早める方法として、これまでにも本稿で紹介したテストが欠かせない。テストには理解を早める心理的な作用もある。つまり、テストの方法としては、教育を開始した時点で最初に示すことによって、「テストに合格するために」と、自習の当面の目標が明確になり、一生懸命に覚えようと頑張る弾みになる。
同時に、テストの合格へ向けた努力は、現場に出たときに、「少なくとも対象となった作業はこなすことのできる」といった意味の“即戦力化”を促す効果もある。ただし、テストは個人の人格を云々し、それによって優劣をつけるのが本旨ではないことを、実施する側ははっきりと理解しておく必要もある。
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(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登) |
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