「社員教育」 その9
経営者の「確定」不可欠 |
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マニュアルづくりの要点を整理してみよう。前号で、それぞれの作業には、具体的に「どういうものがあり」「その仕事にはどういう手順があり」「どういう作業を行うか」を明示するものとしてマニュアルを説明したが、この場合に肝心なことは、経営者が必ず目を通したうえで「確定」することである。
この「確定」が、きわめて重要な意味をもっている。
たとえば、言葉遊びの一つに“伝言ゲーム”がある。最初の人が口にした言葉を、次の人に耳打ちしながら最後の人まで順に伝えるだけの他愛ない遊びなのだが、多くの場合は最初と最後の言葉が、まったく違うものにすり替えられてしまう。ゲームならば、その落差を楽しんでいればいいのだが、現実の職場でこれが行われるのは言語道断だ。しかし、こうした現象が実際に起きるのは珍しいことではない。
そこで、経営者による「確定」が不可欠となる。具体的には「文書化」による確定である。経営者が決めたことを文書化し、必ずそれを現場で運営させるツールが、まさにマニュアルなのだ。
こうしたマニュアルのつくり方には、いろいろな手法がある。ここでは代表的なものを示してみたい。最近、旅館・ホテルで関心の高まっているものに「ISO」がある。ISOは、文書化作業といえるほど多種のマニュアルを必要とし、この文書には作業内容を簡単に取りまとめた「二次文書」をはじめ、より細かく説明した「三次文書」などの区分けがある。
このうち、ライトな内容の二次文書は、たとえば二つの物を並べる場合に、「Aは左上にBは右下に」といったABを選り分ける基本を示すようなものだ。こうした指示がなければ、作業者の一人ひとりが経験だけで勝手に置いてしまい、整合性のない並べ方になってしまう。これに対し三次文書は、「Aを左上に置く場合はAの角を下のマットの角と揃える」などの、より詳細な指示を与えるものになる。
ここで注意すべき点は、指示内容が詳細であればよりよい結果が得られるとは限らないことだ。やたらコト細かに記載・規定しているマニュアルもあるが、詳細に過ぎると現実的でなくなる場合があり、結果として基本さえ崩しかねない。その辺を個々の旅館・ホテルの実情に当てはめて判断することが、われわれのノウハウでもある。
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(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登) |
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