「社員教育」 その8
教え方の”統一”がカギ |
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前号に続いて今号では、各論に移る最終の整理として「ローコスト経営」の要点をまとめておきたい。
構造改革へ取り組むにあたって筆者は、最初に「ノウハウの無い経営者は淘汰される」という事実を強調している。これは、現在の旅館・ホテルが陥っている状況を、人間の健康にたとえていうならば、肝臓病と糖尿病を一緒に直さなければならないような、きわめて憂慮すべき状況にあるからだ。
構造改革を部門別に捉えると、@厨房A後方作業B客室係CフロントD事務などに大別でき、それぞれの「ローコスト経営」では、以下のような点が指摘できる。
第一点の厨房業務は、大別すると「仕込み」と「盛り付け」に二分でき、それぞれについて「集中仕込み」「集中盛り付け」が課題となる。この「集中化」よって、現在の仕事量を一〇〇とした場合に、たとえば八〇に下げることが可能だ。これによる二〇%減は、運用効率で二〇%アップを意味する。
また、集中化の一方で業務の一部をパート従業員への置き換えを図る。現在、午前中に盛り付けて冷蔵庫で保管する方法は、すでに実施されているが、こうした昼間の作業を増加させることで、パートの活用度がより高くなる。
第二点の後方作業部門では、客室係が行っている備品の準備・セッティング、客室片付けなどの業務を、すべて後方作業としてくくり、従来のタテ割型業務区分を排除することだ。これに代わるものとして構造改革では、シフト運営を導入する。
ここでの大きなポイントは、作業を昼間の九−三時の時間帯で限りなく処理することだ。後方業務での夜間作業は、布団敷き、料理搬送、下げ膳など最低限の仕事にとどめ、昼間の時間帯で生産性の高いパートを多用するシステムの構築が求められる。
現状でも「旅館・ホテルではパートの比率が高い」といわれているが、実態はパート従業員の高齢化がすすみ、作業の効率化などは望むべくもない状況が多々ある。こうした構造そのものを変革し、生産性を高めることでコスト吸収を図ることが可能になる。
第三点の客室係は、後方部門が切り離されたことで、料理運営だけに集中する体制ができる。しかも、この料理はすでにパントリーに運びこまれており、セッティングも終わっている。宴会場などでは料理付けも可能であり、客室係は接客に集中できる。
また、後方業務化によって生まれた時間は、送迎に集中させることもできる。
こうした作業の効率化には二つの重要な意味がある。一つは、手の空いている全員で行えば短時間ですむ仕事を、いわゆる「やらせない」「やらない」ために、新たな人員を大量に雇用するハイコストオペレーションの解消だ。もう一点は、拘束八時間・実働五時間などにみられるアイドルタイムの削減にある。
第四点のフロントは、一般的なカウンター業務と捉えれば、二、三人でも対応できる。実際には到着時の案内や送迎などで人員が増えており、とりわけ接客密度の高い施設では、出迎え密度を高める必要から多くの人員を要している。しかし、客室係と連動し、客室係を接客の全面投入できれば、フロント・送迎関係の人員はおのずと減ってくる。
要は、利用客の流れに沿った効率的なシフト運営を図ることで、ローコスト経営が可能になり、同時にCS(顧客満足)も図られる。
第五点の事務部門は、昼間の業務が多いことからパート化が大きな課題となる。事務部門には、経理や予約などの多様なセクションがあるものの、各業務内容を大別すると書類・伝票整理に類する作業が多くを占めている。したがって、各セクションの末端作業を、いわゆる「業務オペレータ」の仕事として共有化させることが可能だ。
業務には高次から低次までのレベルがある。低レベルの業務を月給三十万円の社員が処理していれば、コストが割高になるのも当然だが、低レベル部門をパート化することで解消できる。仕事のグレードに応じて社員を当て込んでいくことが、きわめて重要な要素なのだ。こうした対応は、事務部門だけでなく他の業務分野にもいえる。
これらにメスをいれることが、構造改革における「ローコスト経営」の真骨頂といえる。(続く=経営コンサルタント・松本正憲) |
(つづく) |
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