「社員教育」 その7
「好感度」の維持に工夫
Press release
  2000.09.30/観光経済新聞

 これまでマニュアルや教育のカリキュラムづくりについて述べてきたが、これらが目指すところの一つは、クレームの解消にある。
今日、旅館・ホテル業は“人気商売”といった一面があり、テレビなどでそれを煽る傾向もある。その是非はともかく、突き詰めれば利用客の“高感度”をいかに維持させながら発展させるかは、サービス業としての盛衰に大きくかかわるのも事実だ。
 そうした観点でクレームをとらえると、発生させないことが大原則だが、そのための仕組みづくりがなされていなければ、大原則をまっとうすることは不可能だといえる。
 言葉としての適正は別にして、いわゆる「デキレース」というのがある。
たとえば、客室備品として備わっているべき物がなかったために、利用客からクレームが出てしまった。ほんのささいなことであり、気にとめなければ済んでしまうことであっても、たまたま利用客の感情を害してしまうことがある。運が悪かったで済まされる問題でないのは、サービス業に携わる者であれば、誰でも理解できる。
 「何で、こんな初歩的なミスを犯すのだ」
 上司が部下に注意を与え、部下も素直に非を認める。そうした光景は、決して珍しいものではないが、ここに「デキレース」の問題がある。
 結論からいえば、こうした注意は、する側も受ける側も、その場限りで終わっていることが実に多い。それ以上に、毎日同じ作業を繰り返していれば、時には勘違いや度忘れで、そうしたミスもあり得ると、叱責する上司もされる部下も、内心では思っている。これでは何ら改善されないし、同じミスを再び犯してクレームにつながるのは火を見るより明らかだ。
 いわば、こうした対処の仕方は、クレームの発生を“たまたま”と捉えた泥縄でしかないのだ。「デキレース」でこの繰り返しに免疫ができてしまうと、“高感度旅館”から遠のく一方で、取り返しのつかない事態に陥ってしまう。
周囲を見回し、そうした「デキレース」が蔓延していないか、要チェックである。
 マニュアルの完備や教育システムを構築することで、クレームの発生を未然に防ぐことが必要である。不幸にして発生した事態に対し、最小限にとどめる「危機管理」なども決して別世界の話ではない。
(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登)