「社員教育」 その5
質の高い教材づくりを |
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論語に「一を聞いて十を知る」という一節がある。わずかな示唆であっても全体を理解できる才能の高い人間を指し、逆に「一を識りて二を知らず」は、一つだけを知っていても、他のケースでは応用のできない狭い了見の人をいう。前者のようなタイプが望ましいものの、現実には後者の方が多いし、前者とは似て非なる早とちりタイプも少なくない。
とかく世の中にはいろいろなタイプの人間がいる。個人のレベルであれば、個性として認められるが、企業という一つのワクを考えたとき、それだけでは済まされない。企業としての共通認識は、個人のキャラクターとは別ものだからだ。
そこで必要となるのが、企業ポリシーを全社に徹底させるための社員教育となる。教育で大切なことは、前号で一端を記したカリキュラムにある。あわせて、カリキュラムに沿った教材が欠かせない。これは、マニュアルがあればコト足りるというものではない。
教材づくりのポイントとして、以下の点があげられる。
@ 作業内容の全体を自習できる内容の網羅性。
A 研修後のテスト実施を前提にした全体構成。
一点目は、自習によって反復学習と自己検証が可能になるとともに、教育時間を短縮する意味合いがある。同時に、教える側が複数であっても内容の均一化が図られるとともに、教える労力の軽減にもつながる。
二点目は、単に教えるだけでは意味がなく、教えたことの学習効果を測定するために不可欠な要素といえる。これには、職場配置をはじめとした人事管理の「見極め要素」がある。たとえば、効果の顕現しないものは、現場に配属をみあわせる措置も講じられる。これはクレームの発生を防止する意味でも、極めて重要な要素といえる。また、「教えっぱなし」の弊害は、「一を識りて二を知らず」の人間をつくりだしてしまうことだ。
適切な教材の整備と指導、効果測定によって、教えられたことが現実の業務に生かされてこそ、教育の最終目標が達成される。
能力も才能も、そして個性も異なる人間集団を管理運営するには教育が不可欠だが、教育には時間と費用がかかる。たとえ教育期間であっても、その人間の人件費はかかってくる。投じた費用をムダにしないためには、質の高い教材とカリキュラムづくりがカギを握っている。
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(続く=企画設計主任コンサルタント・平野茂登) |
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