構造改革シリーズ:検証!ローコスト経営
構造改革ツアー参加者 “スリム化”に熱意
宮崎県・松島海岸「ホテル壮観」 2000.09.02/観光経済新聞
ホテル壮観を事例に

 構造改革のコンサルト会社、企画設計(松本正憲社長)は8月23/24日の両日、本社(江口恒明社長)と共催して、「第一回『構造改革』経営者研修ツアー」を宮城県松島町のホテル壮観(上岡正賢社長)で開いた。同研修ツアーは、ホテル壮観が昨年実施した「旅館ダイエット」、「運営経費の抜本的な見直し、新しい人事考課を導入した効率的オペレーション」を現地視察し、それに解説を加えるというもの。参加者は募集人員を上回り、北海道から九州までの27施設、40人が参加した。江口恒明・本社社長は挨拶で、同ホテルの試みを「旅館が生き残るための大事な手段の一つ」とし、研修ツアーを共催した意味を説明。厳しい経営環境かで企業のスリム化は不可欠であるとする一方で、持論である「国、大蔵省に観光振興の重要性を認識させる必要性」を説いた。ホテル壮観をコンサルティングした企画設計の松本社長らが館内視察の案内と解説のための講座を開き、参加者側からは熱心な質問が飛んだ。従来のこうした集いとは違った雰囲気の中で「和やかかつ参加者の熱意を感じる研修ツアー」(参加者の1人)となった。
 初日の冒頭、本社社長の江口恒明があいさつ。旅館経営者にとって厳しい環境にあることを示唆した上で、今後の観光経済新聞社としての方向性を述べた。
 観光を「物見遊山としか捉えていない国や大蔵省に刊行進行制作の重要性を理解させ、観光振興のための国家予算を認めさせる必要性から、21世紀観光推進協議会を民間レベルで立ち上げるべき」と持論を展開、本社も今後、後押しするとした。観光産業は将来性に恵まれているのに反し、依然として旅館経営は厳しく、こうした場合、自館の経営を見直し、構造改革による経費削減に努めることで「正念場のこの一年を乗り切るべき」とした。このホテルを「一つの好事例」として、参加者に真剣な視察を望んだ。
 引き続き企画設計の松本社長が講演を行い、その後に行われる現地視察(厨房、フロント回りの人員配置、事務所内)の予備知識として同ホテルの改善内容を解説。「柱は人材面の構造改革。パート費率を拡大、人事考課、賃金体系を見直し、同時に社員教育マニュアルを導入する事でサービス向上を図る。壮観で年間1億円近くの経費節減ができた」と解説。
 松本社長によると、バブル崩壊前まで旅館経営は「五車線の高速道路を一台で走っていたが、今は、一車線を走らなければならない時代」とし、車線をはみ出す余裕がないことを強調。マクロ経営からミクロ経営に考え方を切り替える必要があり「粗利が減少する今、サービス業としての品質管理を重視すべき」とし「構造改革に取り組む前に業務内容を分析し、業務の平準化を進めるべき」と説いた。
 尚、現地視察は、ホテル壮観の全面協力で実現した。上岡社長は参加者の前で「それほど有名なコンサルタントでもない松本社長にお願いするということは英断だった」と率直に感想を述べた。そして「弊社の場合、英断してよかったと感じている。少しでも旅館業界の仲間の役に立つなら」との考えで、研修ツアーへの協力を申し出たという。
 また、「情報を全て開示する」とし、二日目には、同ホテルの副支配人、フロント、総務、仕入れ、調理の各部門から社員を出席させ、参加者の質問に答えさせた。パート二人も出席、率直な意見を述べていた。
 ちなみに、同ホテルでは週40時間労働制を実現している。同ホテルの社員から「長く勤めているから高給を取るのではなく、実力のあるものが高給を取るべき」との意見が出た。「結果平等から機会平等へ」の精神が同ホテル内には、早くも芽生えはじめている。等級制を導入した新しい人事考課制度にも「等級を上げる意欲にもつながる」と賛同する意見が各社員から相次いだ。
 上岡社長は「従業員にとっては業務の現状維持が楽なのだが、これではいい方向に向かうはずがない。悪しき習慣にテコ入れするのは、第三者でなければ難しい」と本音を漏らした。そして「今は社員に『もう、リストラは終わり。これからは全員で頑張ろう』」と話すつもり」と胸の内を語った。